第33章 現れた刻印

「極論を言えば、悟浄の妖怪としての血が暴走しだしたらあなたを殺してしまう可能性があるって事ですよ。」
「…ｯｯ」
「だから部屋を分けろって言ってんだ。」
「でも、すぐに暴走するか解らないってのもあるんでしょ？」
「その『いつ』が解らねぇって言ってんだよ」
「…あー、待て待て…」
「んぁ？！」
「これが出始めたのも俺自身気づかなかったんだ。つぅ事は今すぐどうこうって事じゃねぇんだろ？」
「そりゃそうかもしれませんがねぇ…」
「危険にさらす必要はねぇだろうが」
「…ねぇ、三蔵…」
「ぁあ？」
「私、出来れば悟浄と一緒に居たい…」
「てめぇ…聞いてたのか？人の話」
「聞いた上だよ。」
「…ｯ」

まっすぐに三蔵の顔を見つめる理世の目には迷いは受け取れない位に意思を持っていた。

「好きだからとかで交わせるもんでもねぇんだ」
「知ってる。正確には知りたい」
「…甘っちょろくもねぇんだぞ」
「ん」
「死ぬかもしれねぇんだぞ？」
「…それは聞いた。」
「…三蔵…」

八戒の言葉も聞こえていない様に二人はじっと互いを見つめたままに一歩も引かない様子だった。

「…死んでもいいって事か？」
「多分だけど…死なないと思う」
「ぁあ？」
「結構近くにいて…体調不良みたいなものも解る様になってて…」
「…そんなもんじゃねぇんだよ！」

珍しく三蔵が声を荒げた。

「…それでも、もし仮に殺されても、後悔はしない…」

そう言い放った理世を見て、三蔵はハァァ…っとため息を吐いた。

「おい、」
「ぁ？俺？」
「他に誰がいる」
「…何だよ」
「約束、忘れんじゃねぇぞ？」

その『約束』が三蔵の中で何を示しているのかはすぐに察した悟浄は小さくあぁ、と答えるのみだった。部屋を後にする三蔵を追う様に八戒もまた二人を残して部屋を後にするのだった。