第30章 花贈~hana okuri~
「三蔵…」
「⋯なんだ」
「な、んで⋯ㇱたの⋯?」
「したくなった」
「飢えてないって言ったのに…」
「気が変わったたけだ…」
それだけを言えば額にキスを落とす。無理やりと言う訳でもなく、優しく、触れるだけのキスだった。
「私⋯ッッ悟浄が…」
「解ってる」
「三蔵⋯ッ」
「嫌なら避けろと言ったが?」
「⋯ッ黙ってて⋯?」
「もとより言うつもりなんざねぇよ」
そう言われ、少し戸惑いながらも肩口に触れた理世。
「三蔵…誰でもいいわけじゃなくて…」
「あぁ…」
「悟浄の事が…好きで…」
「知ってる」
「嫌い⋯だよね⋯こんなの⋯」
「別に、構わねぇよ」
そう答えれば三蔵はゆっくりと理世の後ろ首に手を回せばそっと引き寄せキスを落とした⋯ーーーー
しかし押し倒す事もないままに、ゆっくりと離れれば『寝ろ』と伝え理世を寝かせた三蔵。
「三蔵は?」
「何とでもなる」
そう言い、布団の脇に座ったまま夜を超すのだった。
✳✳✳
翌朝、ゆっくりと体に乗る重さに目を覚ました理世は自身が後ろから三蔵に抱きしめられていることに気付いた。
「これは⋯ッッ」
身動きが取れないままに身動げば、きゅっと手探りで手を捕らわれた。
「さ、んぞ⋯」
「ン⋯」
手を離そうとすれば、運悪くも手のひらが合わさる形に重なる。そのタイミングできゅっと指が絡みあう。
「⋯ッッ」
その指からする悟浄のものとは違うタバコの香り⋯無骨ながらも男性にしては細い指⋯
三蔵が起きるまで⋯とそのままでいた理世だったものの、ガチャリと重たく扉が開く音がした。