第30章 花贈~hana okuri~
「あのバカにも言ったがな、俺は人のものに手ぇ出す程飢えてねぇよ 」
「三蔵⋯」
「まぁ?あのバカのこと放っておいて抱かれてぇって言うなら話は別だがな?」
「そんなこと言ってもその気なんて無いくせに。」
ふん⋯っと視線をそらした三蔵。しかし、すっと理世は三蔵の手に触れ、指を絡めた。
「⋯⋯おい」
「少しだけ⋯ワガママはわかってる。」
「⋯誰でもいいのか」
「違うの⋯私、言われてみたらなんの役にもたってないなって。だからね?⋯本当に巫女とかだったら三蔵の役に立てれるのかなって思って」
「⋯くだらねぇな」
「くだらなくない⋯」
そう言えば俯きながらも理世は三蔵にもたれ掛かるこそしないままに、ぽつぽつと話し出した。
「俺は別にお前が巫女とか関係ねぇよ。」
「何で⋯連れ歩いてくれるの?」
「別に?特別な理由なんざねぇ」
「⋯三蔵⋯」
「さっさと寝ろ」
そう告げる三蔵の首に巻き付いた理世。はぁ⋯とため息を吐いた三蔵に肩を押し戻された理世はだったもののじっと視線が重なった。
「どちらにしても、お前が巫女じゃなくて良かった」
「⋯え?」
「巫女なら悟浄と付き合えてねぇ話になるだろう?」
「それもそうなんだけど⋯」
気付けばするっと理世の肩からローブも着崩れ始めていた。
「んな顔してんじゃねぇよ」
「さんぞ⋯ッ」
そっと頬に触れる三蔵の手にぴくりと肩が震える⋯
「⋯嫌なら⋯避けろ」
そう言われたものの、理世の体は避けることをせずにゆっくりと近付く唇を受け入れた。触れるだけの唇⋯軽いリップ音を鳴らせば離れていくそれに理世の唇からは無意識に小さく吐息が漏れた。