第30章 花贈~hana okuri~
そんな中、支度をすべて終えた三蔵と理世は少しばかり奥まった部屋に通された。
「ではこちらへ⋯」
そう言って理世は中に通された。そこには薄暗い広い部屋の真ん中にあまり見ることのない程に大きい蚊帳が部屋の真ん中に1つあるだけだった。
「⋯ッッ」
体感的には長い時間に思われたものの、直に後ろの扉が開いた。
「では三蔵法師様、それではごゆるりと⋯」
「おい。」
「はい、何でしょうか」
「あいつらを引き取らせろ」
「え?」
そう三蔵が言い放った相手は見届け人として配置されていた二人だった。
「いえ、そういう訳には⋯」
「こいつとの時間を邪魔されたくねぇ」
そういえば理世を後ろからぐっと抱き寄せる。その腕にどきりと高鳴る胸を抑えながら俯くほか無かった。
「しかし!」
「こいつが啼くのを他のやつに聞かせたくねぇって言ってんだ」
「⋯⋯ッッしかし⋯」
「人払い、しねぇのか?」
そういう三蔵の声が一際低くなったのを聞いて長は座っていた二人を立たせ、部屋を後にしていく。二人きりになったのを確認し、外から鍵をかける音を聞いて三蔵はゆっくりと腕を離した。
「たく…面倒くせぇ…」
「三蔵…?」
「来い…」
手首をすぐにでも振りほどけるほどやんわりと掴めば三蔵は蚊帳の中に連れて行く。
「あの…」
「心配するな。抱かねえよ」
「え…?」
「…何が言いたい」
「だって…」
「それともなんだ、抱かれたかったのか?」
「ちが…ッッ」
「だろうな。」
布団の上に座らせれば小さくため息を吐き、三蔵は横に座り込む。
「俺がこれしか着てねぇんだ。理世もだろうが」
「ん…」
そう。ガウンしか着用を許されなかった二人。インナーどころか下着すら着用していなかった。