第30章 花贈~hana okuri~
「いってなかったじゃねぇか…んな事…」
「そうですねぇ…そして何よりも当人同士が知っているかどうかの問題もありますが…」
「…チッ…」
気を紛らわせようと取り出した煙草も、残り一本…火を点けようとしてもガス欠…とことんついていなかった。
「…悟浄…恐らくですが、三蔵は手を出さないと思います。」
「…うるせぇよ…」
「いえ、僕のカンではありますが…前の様にあなたに牽制を張るわけでも、理世に教えるためでもないままにただ街のしきたりだけってだけで抱くとはおも『うるせぇよ、八戒』…ハァ…」
もう今の悟浄には何を言ってもまるで聞こえない状態だった。先ほどの男性の話ですら本当なのかどうかも怪しい。ただ、茶化すためだけにという可能性だってある…そう思っていた八戒だったが、…ただでさえある意味『前科』のある三蔵相手だったからだろう。理性を…落ち着きを持てなくなっている悟浄の背中を見つめるしかできなかった。
***
こうして花車の練り回りも終わった。
「おい、おっさん」
「おっさんとは失礼だぞ」
「まぁまぁ、悟浄落ち着いて…」
「落ち着いてられっかっての」
「八戒?悟浄どうしたの?」
「いえね、悟空…」
「この後三蔵と理世はどうするんだって話だ。」
「この後、でしょうか?」
「はい。街の方からあるうわさ、を聞きまして…」
「この後は見届け人二人のいる中で夜伽を行っていただき、その中で祈りを込めていただく、というものです。」
「…ッ…ざけんなよ…」
「悟浄…!」
「昨日は言ってなかったじゃねぇか!」
「悟浄!」
そういえば八戒が背中から止めた。
「仕方ありません…祈りの為です。」
そう言い残して長はその場を離れていった。