第30章 花贈~hana okuri~
そんな様子を見ていた三人…
「…きれいだな、二人とも」
「そうですねぇ…」
「…ッ」
「悟浄、落ち着いてください?」
「落ち着けるかっての…」
「どうかしたの?悟浄」
「…なんでもねぇよ」
そういえばふいっと背中を向ける悟浄。
「…あ!三蔵こっち見た!俺行ってくる!!」
街の子供と一緒になって花車を追いかけていった悟空。その場に残った悟浄と八戒。
「…悟浄?」
「なぁにが普通の衣装だ…くそ…」
「恐らくこの地での巫女の衣装なんでしょうが…」
「…だからって…横に三蔵のってんだぞ…」
「…仕方ありません…」
本来なら見逃すところ、加えて街の住民は巫女の衣装を知っているだろう中でひときわ視線を集めていたのは三蔵の方だった。しかしながら悟浄は一人視線が理世に向かっていたため、すぐに胸元も透けていることが分かったのだった。
「…触れでもしてみろ…ぶっ殺す…」
「穏やかじゃありませんね…」
「おんや?兄ちゃん、あの巫女さんに惚れてんのか?」
「…んぁ?」
街の人だろう。少しばかり年上だろうと思われるほどの見かけの男性に悟浄は声をかけられた。
「…あぁ。だったらなんだよ」
「かわいそうに…」
「ぁ?」
「夢見る前に教えてやるな?」
「何をだよ」
「…今夜あの二人は…ーーーー」
そっと耳打ちをされるようにヒソりと教えてくれたその男性の言葉に悟浄の意識は切れそうになっていた。
「…悟浄…?」
「本気か?」
「あぁ。と言っても三蔵法師様が唯一手を出せる女性が巫女だけだから仕方ねぇよなぁ」
「…ッッ」
「基本は女人禁制。そんな中で近くにいる女性であれば必要不可欠だってわけだ。」
「…ッ」
肩をポンっと叩いて『そういう事だから…』と伝えればその場を離れていく男性。残された悟浄は唇をかみしめて立ち尽くしていた。