第30章 花贈~hana okuri~
下こそスカッツと言わんばかりに一見スカートに見えるズボンタイプだったものの、トップスは腰回りまでのシースルーの簡単なガウンのみだった。
「…あの、これってインナーは?」
「ございません」
「下着は?」
「つけないでいただきます。」
「……胸見えちゃいますよ?」
「お気になさらず」
「…ッッ」
予想していた巫女の衣装とはまるで違う。どうしたものかと思っていた。
「巫女様、最後にオイル塗らせていただきます…」
そう言われて艶出しの為のオイルをするっと塗られていく。
「こちら、戻り次第もう一度塗らせていただきますね?」
「もう一度って…?」
「同衾の為でございます」
「どう、きんって…すみません、なんでしょうか…」
「またまた御冗談を…それとも夜伽の方が巫女様は知ってらっしゃいますでしょうか?」
「…ッッ」
「大丈夫です。見届け人を二名付き添わせますが、居ないものとしていただければ。いつも通りの三蔵法師様との夜の営みをしていただければ…」
「…あの、それって…」
焦る理世ににこりと笑みを向ける女性は『できましたよ』と塗り終えた手をきれいにふき取った。
「…そろそろ花車の用意ができますので。もうしばらくお待ちいただければ…」
「は、い…」
逃げる事も出来ない…そう感じた理世だった。
「…三蔵はこの事知ってるのかな…」
心がドクドクと煩い……ーーー公然とした繋がり…しかし昨日の時点で長からはそんな話はなかった。それとも『これ』は普通の事なのだろうか…いろいろな考えだけが理世の心を乱していくのだった。