第28章 不意打ちの情
そうそうに理世も浴室から上がる。しかし上がった所で悟浄が帰っているわけもなかった。
「やっぱり、か…煙草って言ってただけなのに…」
しかしそう呟く言葉も一人きりの部屋にむなしく響くだけだった。
「…ッッ」
部屋を出る直前に抱きしめられた腕の強さとわずかに感じた温もり…それだけで理世の体は少しずつ熱を帯びていた。
「…ッ…」
ゆっくりと自身の手は胸元に触れる。敷かれた布団の上で、愛おしい人もいない中、ただ一人で服の裾から手を忍ばせる。
悟浄がいつ帰ってくるかもわからない中で、理世はゆっくりと揉みはじめ、胸の突起を軽くつまむ。少しずつ体もぴくりと反応を示しだす中で、心が背徳感で埋め尽くされようとしていた。
「…ッん…ごじょ…」
目を閉じ、指先に集中していく…ーーー左手はそのままに右手がゆっくりと秘部へと移動する…
そこは自身の手ながらもすでに湿り気を帯び始めていた。
「…ンァ…ご、じょ…」
名前を呼ぶものの、ただその人はいない…ゆっくりと指がナカに入ろうかとした時だ。
「…あーぁあ、たく、タバコ屋までが遠いっつぅ…の」
そんな声と同時にふすまがシュルっと開いた。
「…ッ…?!」
誰よりも驚き、びくりと体をこわばらせたのは言うまでもなく理世だった。慌てて服を整え、ばっと背中を向ける。
「…あー…理世?」
「何も…聞かないで…それに言わないで…」
「…そういう訳にもいかねぇだろうがよ?」
「…ッ…見なかったことに…ン…」
しかし理世の懇願を無にするように悟浄は少しずつ距離を詰め、すぐ横に座り込んだ悟浄。ただ、触れる事はなかった。