第28章 不意打ちの情
そうこうとしながらも二部屋に分かれていく。
「…えー!悟浄ずりぃだろ!」
「うるせぇよ。文句あんなら三蔵に言え」
「あぁ言ってますが?」
「少なくとも俺はあいつらの情事なんざ見たくねぇよ」
「同感です。」
「じょーじって何?」
「…それは、悟空…」
「ん?」
「ほら、悟浄の好きな事ですよ。」
「…・・・あー、それは俺も嫌だな…」
「でしょう?」
しかしそんな事を言われているとも知らないままに悟浄と理世は隣の和室に入っていく。
「…悟浄?」
「んー?」
「煙草、どうする?」
「外で吸うしかねぇわな…ま、買い物がてら吸ってくるわ」
「…ん、解った。」
そう言いながらも荷物を整理し始めた理世を見て悟浄はニッと笑って近づき、そっと後ろから抱きしめた。
「…何?寂しかったりする?」
「別に?大丈夫。」
「ふぅん、んじゃ、八戒にも言われてっし、行ってくるわ」
「ん、行ってらっしゃい」
そうして見送る理世。部屋を後にすれば悟浄はくしゃりと前髪を掻きあげた。
「…俺だけ、ってか」
そう。あれだけ抱き合う日々が多かった中で、五日は触れていない。それに対して少しは寂しいと思ってくれているのだろうと悟浄は勝手に期待して居た。
「勢いあまって押し倒さなくて正解だったわ…」
珍しくぽつぽつと話し出しながらも悟浄はガシガシと頭を掻きながらも宿を一旦後にするのだった。
悟浄が煙草を買いに行って時期に理世は浴室に入っていく。八戒が『ゆっくりとどうぞ?』と悟浄を連れ出してくれたというのもあるのだ。
「五日ぶりだからって思ったけど…案外すんなりと行っちゃった…」
ちゃぷ…っと湯船につかりながらも理世は小さくため息を吐くのだった。