第21章 スキを形にして
その時だ。
「…あ…」
理世の視界に飛び込んできたのは悟浄の緋色の髪だった。
「…ご…じょぉ…?」
「何かありましたか?理世」
「ごめん…私…」
「ハァ…さっさと行け、見失うぞ?」
「ごめん…ありがと…」
三蔵に言われて理世はすぐにその場を離れた。
「…ち、ちょっと、理世?」
「放っておけ」
「しかしこんな人込み……・・あー、そういう事ですか」
「…世話の焼ける奴らだ…」
「クス…三蔵らしからぬ、ってやつですね」
「あっれー?!理世は?」
「悟空、ちょっと離れてるだけですよ。大丈夫です」
「本当に大丈夫かな?」
「心配すんな。どうにもならなくなったら宿に戻るだろ」
「そっか!よっしゃ!三蔵!あっちにさ!」
「おい、引っ張んじゃねぇよクソ猿」
「平和なんですかねぇ…これは…」
そうして三人と一人に分かれていった。
***
悟浄の後を追う様にして三蔵たちと離れた理世だったものの、見失わぬようにしていた。しかしながらどう声を掛けたらいいか迷っている。
「…いきなりってのも…」
しかし、人混みの分け目から見えたのは悟浄の左腕に腕を絡めて歩く女性だった。
「ッッ…」
正直にいえば理世はこんな光景を見たくはなかった。それでもこうなってしまったのは自分の言葉足らずのせいだと言う事。それは解っていた。
「…悟浄…」
気付けば理世は走りより、声をかけていた。
「あ、あの…!」
「え?」
「……理世」
「あの、楽しいところ申し訳ないんですが…その…」
「何?あ、あなた…悟浄と一緒に居た…」
「あ、そう、です」
「何?何か用?」
「…あの、悟浄から…手、離してもらえませんか…」
「え、嫌なんですけど…私たちこれから星のきれいに見える、絶景のホテルに行って、楽しく過ごすので」
「それ、やめてほしいです」
「何言ってるの?頭おかしいの?」
「いえ、そういうつもりは…」