第26章 battle20.5…溢れる心 (pov雅)
「…あれ…おかしい……ヒック…泣くつもり何て……目にごみでも…入ったのかな…」
ごみなんて入ってない……
どうして…涙が……止まらない……
ため息を吐く音が聞こえる……
呆れるよね……当然だ……
「何泣いてんだよ」
「…ないてない……です……ゥッ…ズッ…ちょっと待ってください…すぐ…止まる」
すぐにでも止めないと……いいたいこと云々じゃなくなる……
でも……どうしよう……
好きが溢れて……涙に変わる……
それでも…私は願えない…
それでもまだ…色々知りたいのに……
もう叶わなくなる……
迷惑かける……そう伝えたら……
気付いたら三蔵さんの腕の中にいた……
「何で泣いてるのか聞かねえから…それに迷惑だなんて言ってねえよ」
「……・・・ーーーーッッ…」
少しでいい……
拒絶されるくらいなら……伝えないままの方が……
三蔵さんには…大切な人が居る…
「で…?いいたいことは終わりか?」
「…忘れました……」
嘘……胸に溢れてる……
「何言ってんだ?」
「いいません…」
「そうか…」
「忘れちゃった…から」
忘れてない…
忘れられない……
このままだと甘えたくなる……
ぐっと三蔵さんの胸を押し戻した……
「済みません…汚しちゃって……」
「構わねえよ」
「……ッッ…」
「……たく、相変わらず下手くそだな」
「え…?」
相変わらずって……
何………?
なんで…嘘だって…解るの……?
そのまま左耳にかけられた横髪に誘われるように顔を上げれば、ふっと唇が重なった…
ど…うして……?
なんで……?
こんなの…勘違いする……
「泣き止んだら帰れ」
そう言われたけど……
唇には微かにたばこの香りが残った
鼻を擽る少し甘めの香り……
どこかで感じたことのあるような…
知ってる……?私……
でも、
なんで…キス……したの……?
扉の外に出て……
ふと唇に残る感覚に誘われるように……
「……好き…です」
聞こえない告白が…廊下に消えていった……