第25章 battle20…キス
「…あれ…おかしい……ヒック…泣くつもり何て……目にごみでも…入ったのかな…」
「…ハァ…」
そっと椅子から立ち上がり三蔵は雅の前にやって来る。
「何泣いてんだよ」
「…ないてない……です……ゥッ…ズッ…ちょっと待ってください…すぐ…止まる」
そういえば言う程どんどん溢れてくる涙。もう何をしても止める術は無いかの様に溢れてくる。
「……ごめんなさい……いきなり来て…ズッ…ウック…こんな……」
「何言ってんだ」
「迷惑……ヒック……かけるなんて…」
「…たく」
ぐいっと引き寄せるとポスンと胸に抱きいれた三蔵。
「何で泣いてるのか聞かねえから…それに迷惑だなんて言ってねえよ」
「……・・・ーーーーッッ…」
ただ胸にすがり、涙を止めようとする雅。いいたい思いはあるのに、何かがそれを止めているような気がしていた。大分すすり声も落ち着いて来た時、三蔵は改めて声をかけた。
「で…?いいたいことは終わりか?」
「…忘れました……」
「何言ってんだ?」
「いいません…」
「そうか…」
「忘れちゃった…から」
そう言いながらぐっと三蔵の胸を押し戻した雅。顔は俯いたまま涙をぬぐっていた。
「済みません…汚しちゃって……」
「構わねえよ」
「……ッッ…」
「……たく、相変わらず下手くそだな」
「え…?」
そっと左側の髪を一房耳にかけ頬を包み込むと顔を上げさせ、重なるだけのキスを落とした三蔵。
「泣き止んだら帰れ」
「……なん…で」
「いいから…」
そういって扉を開けた三蔵。トン…と背中を押すと部屋から自然な形で出ていった雅をみてパタンと扉を閉めた。
そのまま扉に凭れた三蔵。
「何やってんだ…俺は……ッッ…てか、あのクソババァ、嘘の吐き方も教えとけって……」
そう呟く声は雅には届かなかった……