第24章 scene19…桜の下
「仕方ねえからオレはオレで仕事でもするか」
「仕方ねえとはなんですか!」
「ろくに目も通さずに判子押してくだけだろ?あ、二郎神、おまえがやってもバレねえんじゃねえか?」
「……観世音菩薩!!!」
相変わらず、天界には二郎神の声が響くのだった。
「はい、では後これです」
「…いつにも増して多くねぇか?」
「仕方ありません、幹部が寄越してくるんですから」
「あのなぁ、オレも一応幹部じゃねぇのか?」
そう呟きながらも一応書類に目を通していく。
「……メンドクセェ」
「まだ始めて一時間も経ってませんよ?」
「お前は家庭教師か、二郎神」
「…ハァァ」
そうこうしながらも地味に仕事を片付けていく。
「何か飲むもの用意致しましょうか」
「あぁ」
二郎神が席を離した時だった。
「おい、雅……って、いねぇな」
天井を仰ぐとため息を吐く。そっと頭の後ろで手を組み、そっと目を閉じた。
「本気で思うんだよな…あのまま雅、オレの物にすることだってできたのにって……」
愛してるとか…好きだとか……そんな感情はなかったにしろ、一緒にいてすごく和んだ。退屈とは無縁の日常になっていた。
「…金蟬…お前が悟空面倒見てるときにはこんな感じだったのか?」
そう呟く声は誰にも届くことは無いまま、菩薩の心に染みて終わった。