第10章 scene9…真実
そうして敖潤もその場を離れた。西方軍の面々が集まってくるといつの間に打ち解けたのだろう…雅の回りにはいつだって人だかりになっていた。
「これこれ!すっげぇかっこいいだろ!」
「変な趣味……」
「やっぱそうだよな!」
「うるせえよ!この趣味がわかんねえのか?」
「解んない…」
「雅に同意だ!」
「てかさ?」
そういった話しで盛り上がっている。少しすれば一緒になって手合わせも始まる。大分立ち回りも形になってきた。軍人に混ざっての手合わせや、諸々の事も本来ならば難しいことだった。それでも下界での失われた記憶の片隅に、体が覚えていたのだろう。
「おーおー、やるようになってきたじゃねえの…」
そう呟きながらも菩薩はみていた。その日の夜。
「……菩薩?」
「なんだ」
「あのね……聞きたいことがあって…」
「なんだ」
そう答えながらも菩薩は雅を招き入れた。
「…」
「さっさと話せ、何があった」
「……私…記憶って失ってないの?」
「…なんだいきなり」
「聞いたの……見た事無い人だったから…もしかしたら…うわさ話かも知れないんだけど……」
そういうと雅は菩薩のもとに来る少し前に聞いた話を話し出した。
「……なるほどな…」
「本当なの?」
「どこからどう漏れたのかは解らんが……オレが話してあったのは二郎神だけだからな……とはいってもさすがの二郎神も言う訳無いだろうが…」
「…それって……本当なんだ…」
「あぁ。ただ……」
「ただ?」
「覚えてねえだろ…?」
「え?」
「ほら、夢で見たような…」
「……ん」
「記憶は消せてねえが……蓋して鍵してあるからな……」
「かぎ…?」
「あぁ。」
「それってどうしたら開くの?」
「誰が教えるか、ばぁか」
「…ひどい……」
「何がだ」
「…また菩薩ばかって言った……」
「…雅…プ…そっちかよ」