第9章 キスから✿保科宗四郎✿
家の近くの公園でボーっとしていたら、いつの間にか暗くなってしまっていた。
保科さんはどうして私にキスをしようとしたの…といくら考えてもわからないことが頭の中を駆け巡る。
「あれ?まだ帰ってなかったん?」
なんで来るの…なんで知らないフリをしてくれないの。
ブランコに座ったまま俯いて無視をしていると、突然ブランコが後ろに引かれていく。
そして足がつかない程引かれると、パッと手を離される。
子供じゃないんだけど…。
ぶらぶらと揺られて緩くなってから地面に足をついて止める。
「キス…保科さんなら避けられたんじゃないんですか。」
「んーまあそうやけど…別にキスくらいやし…。」
は?キスくらい?保科さんってそんな人だったんだ。
やから君ともしてもええんやけどなと目の前に顔を出され、思わず頭突きをしてしまった。
「ったあ!ほっぺの骨折れたかも…。」
別にそこまで強くやったつもりはないんだけど…。
「好きな人としかしたくない…。」
「……そやね、好きな子としかしたないね。」
さっきと言ってることが違うんだが。
首を傾げて彼を見上げれば、眉を下げて困ったように笑う。
「妬いてるん可愛くてしたなってもうただけやから、あんま気にせんといて。」
保科さんが言っていることが本当なら、キスしようとした時は私のことを好きだと思ってくれたって自惚れてもいいのだろうか。
自分の都合のいいように考えてしまう私が浅はか過ぎて笑えてくる。
「してもいいですよ…拒んだらすみません。」
「なんやそれ、悲しくなるやつやん。してもいい言われてしようとして拒まれたら、恥ずいしイライラしてくるわ。」
何を言ってるんだろう私。
保科さんとキスしたいのに、しようとするとあの場面がフラッシュバックする。
あれを忘れるくらい愛されれば……って、本当にもうバカ過ぎる。
保科さんは遊んでるだけ、自分を好きな女が自分の行動一つで一喜一憂してるのを楽しんでるだけ。
そうわかってるのに欲しくなる。