第9章 キスから✿保科宗四郎✿
社会人2年目の一般人の私がとあるきっかけで保科さんと知り合い、4年が経った。
まあとあると言っても、怪獣災害の時に助けてもらっただけだが…。
それでもそれからちょくちょく顔を合わせては近況報告等をしていて、つい先日、連絡先をゲット出来た。
仕事の帰り道たまたま怪獣が現れ、討伐後シェルターから出ると、保科さんの姿を見つけ駆け寄ろうとしたがやめた。
「……そ、そうだよね…あんなかっこいい人だもん、彼女くらい…。」
建物の影に隠れ女性とキスをする彼を見て、立ち去りたいのに足が動かない。
彼女さんも防衛隊の人なんだ。スーツを着る相手の方を見て、意識を紛らわせた。
早くここからいなくならきゃ、じゃないと見つかってしまう。
なんとか動いた足で彼らに背を向けると声をかけられる。
「美影やない?おったんね、大丈夫やった?」
振り向けずにいると肩を抱かれてしまう。
そして、見とった?と耳元で囁かれた。
「別に、何も……。」
「今のはその…ちゃうで?僕がしたかったわけやないし、ちゅーか彼女でもない。」
なんでそんな風に言ってくるのかはわからなかった。
私に言い訳なんてする必要あるのだろうか。
「あ、そうなんですね。彼女じゃなくても出来るんだ……。」
「は?されただけや。妬いとるん?」
ボソッと呟いた声はこんなに近ければ、さすがに聞き取られてしまったようだ。
肩に回された腕を取り、好きですと小さく呟いて逃げた。
「はぁ?言い逃げとかずるない?……待ちぃや。」
だがすぐに追いついてきて腕を掴まれた。
「今のは、答えが欲しくて言うたん?それともただ言うただけ?僕にどうして欲しいん?」
なにそれ…私が付き合って欲しいと言ったらそうするのか?好きでもないくせに?
腕を思いっきり引っ張られて体勢を崩すと彼の胸に収まり、顔が近付いてきた為、慌てて引き剥がした。
さっきまで別の人としてたくせに。
「え、どっちなん?僕のこと好きなんやないの?」
慌てて逃げると意味わからんと後ろから呟く声が聞こえる。
保科さんとはこれからは距離を取らないと…もう連絡がくることはないと思うけど。
好きなんて言わなきゃよかった、そしたら今までの関係でいれたのに。
でも口が勝手に言ってしまっていたのだ。