第8章 年下幼馴染はご乱心✿保科宗四郎✿
「大事な話する言うたやろ?聞いて?」
なんのことだろう…さっき父が宗一郎くんと結婚しろと言ったことに関係あるのだろうか。
私が生まれた三浦家は昔から長女は保科家の長男に嫁いでいたと言われた。
どうやら先祖がそう約束したらしい。
私の先祖と宗四郎くんの先祖が、愛し合っていたのに結ばれる前に命を落とした。
命を落とす直前、未来永劫愛し合おうと誓い合い、それを家臣に伝えた。
それが親族に伝わり、今まで残っている。
なんで、長男と長女なんや…そんなんどうでもええやん。
ちゅーか、誰と結婚してもええやん。なんや、自分たちは愛し合っとったんに、子孫たちは愛し合ってへんくてもええんか。
ん?私たち血ぃ濃くない?従兄妹同士で結婚しとるん?
「私、宗四郎くんと従兄妹なん?」
「従兄妹程は血ぃ濃うないよ。分家とかあるやろ?毎回、別の分家からとか本家からとか、コロコロ変えよってた。」
そういえば私の方はいっぱい分家があったな。
じゃあ長女というのは?
三浦家はその時の分家や本家の長女を、保科家は毎回本家の長男を…ということらしい。
今回はたまたま私が生まれた本家だった。
ようそんな近親相姦みたいなんで今まで生き残れたな。
「これって…私らだけで決めてええもんなん?」
生まれた時から夫になる人が決まってるなんてありえないけど、代々そうしてきたのなら2人だけで決めてはいけないだろう。
「君はどうしたいんや?」
宗四郎くんの隊服の裾をぎゅっと握った。
「僕がええ?何も、僕らから選ぶ必要もないねんで?僕がどうにかしたるから。」
どうして宗四郎くんは知ってるのに、私には知らせてくれなかったのだろう。
わからない…そんな話を聞かされて納得出来るわけがない。
どうにかしたるって、そんなの宗四郎くんが出来るものなのか。
ずーっとそうしてきたのだから、難しいのではないか。
もちろん私はそんなものがなくたって宗四郎くんを選ぶ。
「宗四郎くん……好きや…ほんまに好き!宗四郎くんがええ…ずっと一緒におりたい。」
「僕もや、でもすぐ答えは出せへん。君も大事やけど、家も大事なんや。やから、僕が説得するまで待っとって。」
コクっと頷けば八重歯を見せて笑った。
ずっと見たかった笑顔だ。