第8章 年下幼馴染はご乱心✿保科宗四郎✿
酷く傷付いたような顔をして出ていった彼女を追いかけたかったが、こうなった以上僕には先にしなきゃならないことがある。
スマホを取り出し実家に連絡をする。
「美影ちゃんは僕がもらう。」
何かを言おうとしていた父に忙しいからと言ってすぐに電話を切った。
そして、こっちに来てから一度も話していない人物に電話をかけた。
「なんや珍しいやん、宗四郎から連絡してくるなんて…兄ちゃん嬉しいわぁ。」
「美影ちゃんは僕を選んだ。そういうことやから。」
すぐに電話を切って、先程彼女に向けた言葉を後悔した。
彼女を前にするとすぐ頭に血が上りイライラする。
今まで僕が手を出す隙なんてなかった、だからずっとその気持ちを押さえつけるように声を荒らげた。
僕は保科家の長男やない、ましてやあんな兄貴がいれば僕があの子を手に入れるなんて出来るはずもなかった。
もう我慢なんてせぇへん、兄貴やなくて僕を選んでくれたんや、もう誰にもやらん。
三浦家の長女は僕のもんや。
あの子は自分の生まれた家もよくわかっていない、代々保科家の男と結婚しなければいけない可哀想な一族。
三浦家に生まれた女は、この世に生を受けた時から保科家の長男に嫁ぐことが決まっていた。
それでも今まであの子が兄貴といなかったのは、僕がそうさせたからだ。
せめて、結婚するまでに恋愛をさせてやれと…。
だが両家共、兄貴か僕なら…と言った。結婚もどちらかとなら選ばせてやると。
わかっていた、僕が美影ちゃんのことを好きなのがバレていたことを。
だから兄弟で1人の女の子を奪い合った。
だけど途中で気付いてしまった、大人たちは元々美影ちゃんを兄貴としか結婚させる気がないと。
子供の僕を宥める為にあんなことを言ったのだと…。
やけど…そんなもん覆したる。