第7章 抑えられない✿保科宗四郎✿
入隊から1ヶ月も経たないうちに私は彼の虜となってしまった。
だって、顔はいいしよく笑うし強いし…めちゃくちゃスパルタだけど。
でも、厳しい訓練もみんなを和ませる笑い声も全部、彼の優しさだと知った。
いつ誰が死ぬかわからない防衛隊で笑うこと、厳しい訓練で部下を強くし簡単に死なせないこと、彼自身も市民だけではなく部下をも守る為努力し続けていること。
そんなの…好きになるしかないじゃん。
初めの頃は可愛いとか好きとか言われて、まともに受け取ってしまっていた。
モテる彼の特別で、他のみんなとは違うんだと思っていた。
でも女の子が好きやからと笑い、他の女性隊員のところへ行った彼を見て思い知らされた。
私は他の人たち変わらない、揶揄っているだけだと。
「……どうしても勘違いじゃないといけないんですか?」
本当にはならないんですか…。
「ん?何が?」
好きだと言ってしまえばもうこんな風に揶揄われることもなくなるんだろうか。
嫌だ、ならこのままがいい。辛いけど、苦しいけど…今までの関係が何もなかったようになくなってしまえば、きっと私は耐えられない。
なんでもないですと答えながら閉じられた隊服のファスナーをなぞり、スライダーに指をかける。
どこまで許される?
「何しとんの?」
「手摺りから手、離しちゃダメですよ?」
ジー…っとファスナーを下ろして広げ、インナーから浮き出た筋肉に張り付いた。
「勘違いさせるんだったらこのくらいしないと、ですね…。」
そのまま顔を上げて近付けていく。
だが、手摺りから手を離し、私から距離を取った。
「あかん!」
背を向けた彼はそのまま屋上を出ていく。
あぁ、やってしまった…やっぱりダメなんだ、私じゃないんだ…。
頬が濡れていく、ぽたぽたと零れた雫は屋上の地面に黒いシミを作っていった。