第7章 抑えられない✿保科宗四郎✿
「可愛ええなぁ、やっぱ好きやわ〜。」
「っ…だからっ!やめてくださいってば!」
「え〜ええやんか。僕、ほんまに女の子大好きなんやもん〜。」
防衛隊入隊2年目、今日も私の心はイケメン副隊長に乱される。
本人は女の子大好きと言うが、他の人に言ってるのを聞いたことがないし、この笑顔も私以外に見せてるのを見たことがない。
だから、期待してしまうのだ、勘違いしてしまうのだ。
私は本当は特別なんじゃないのかと…。
「あなた、顔がいいの自覚してますよね…。」
「おん、かっこええやろ。」
ダメだー!!ちゃんと武器にしておった…。
訓練終わりの屋上では夕焼けが余計、彼の顔を輝かせる。
そんな笑顔のまま散々、可愛いとか好きとか言うくせに、私には一切触れて来ない。
私はあなたのせいでこんなに絆されているのに…。
触れて欲しい…触れたい。
どんなに手を伸ばしても、私の手はいつも空を掴むだけだった。
「なぁ三浦。僕に言いたいことあるんやないの?」
特に言いたいことなどないが……。
「そうですね…私を見掛ける度に可愛いとか好きとか言うのやめた方がいいと思います。誤解されますよ?」
今まではなんとか私の態度で変な噂が流れているわけではないが、それも時間の問題だと思う。
だって…すごく私もと言いたい。
「なんで?ほんまのこと言うたらあかんの?誤解てなに?勝手に勘違いさせとけばええやん、僕ら付き合うてるて。悪ぅ虫も寄り付かんやろ?」
なんで…私のことが好きなわけでもないくせに…ただ女の子だからなくせに。
わけがわからなくなって逃げようとしたら、鼻を痛めた。
隣にいたはずの副隊長が後ろにいて手摺りを掴んでおり、腕の中に閉じ込められてしまった。
「な、ななななんですかっ…!」
「ははっ、動揺しとるん?僕から触れてへんからな。」
近い…顔が上げられない。
あぁ、触れて欲しい…もっといっぱい、誰も知らないとこまで。
このまま全部言えてしまったらいいのに。