第5章 好きな人には愛されたい✿保科宗四郎✿裏
怒鳴る彼の顔を両手で押さえて口付ける。
舌を入れようとしても、彼の唇はそれを許さなかった。
「口、開いてくださいよ…。」
「アホちゃうか!?降り、ろっ!!」
こんなことをしている私は除隊になるだろう。
それでも彼に触れたいのだ。
「今すぐ離れれば、今回のことは咎めん。」
もういい。彼が私のことを見てくれないのなら、一度だけでいいから…私を抱いて…。
また口を開いた彼の唇に押し付けて舌を絡めた。
私の舌に彼の八重歯が刺さる。
噛まれた…痛みに耐えられずすぐに唇を離した。
「言うてもやめんなら、もう知らん。」
降りろと肩を押され突き飛ばされる。
尻餅をついて俯いた。
私が悪いのはわかってる…それでも拒否されたことが辛かった。
私の方が先に好きになったのに…2人が付き合うずっと、ずっと前から好きだったのに…!
グッと拳を握って涙が零れないように耐える。
上を向いて彼を見つめた。
「好きです……ずっと…何年も前から好きなんです!副隊長のことがっ…!」
「やからって、許されることちゃうやろ。」
そのくらいわかってる。
けど、抑えられなかった。
ギュッと座る彼の足に縋る。
「好きなんです…許してください、お願いしますっ…除隊でもいいです、許してください……一度でいいから、好きな人に愛されてみたかった…。」
我慢していたはずなのに涙が頬を伝う。
「おかしいやろ。除隊でもいい言いながら、なんで許して欲しいんや。」
「少しでもいいから、私を見て欲しい…。」
お前のせいで弁明も出来ず終わってもうたやないかと言いながら、縋る私の手を取り引き寄せた。