第5章 好きな人には愛されたい✿保科宗四郎✿裏
私の好きな人には恋人がいる。
もちろん私ではない。
その恋人に勝てるとは思っていない。
強くてかっこよくてすごく綺麗で、彼はベタ惚れなのだ。
私の好きな人は第3部隊副隊長の保科宗四郎だ。
恋人は隊長の亜白ミナ。
わかっている、私が入り込む隙なんてないことを…。
だが、その瞬間が突然やってくる。
「すまない保科、別れてくれ。」
どうやら亜白隊長は幼なじみの男の子が忘れられないらしい。
だから、この状態では付き合っていくのは無理だと言っている。
隊長室の扉に貼り付きその声に聞き耳をたてた。
「なんでですか!亜白隊長が好きです!僕にはあなたしかいないんですよ…ミナさん!」
ギュッと胸が締め付けられた。
好きな人が他の人に必死に好きだと言うのは聞きたくなかった。
亜白隊長はまたすまないと謝り、考えを曲げる気はないらしい。
私は何を思ったのか、扉を開け放ちズカズカと中に入り副隊長の腕に自身の腕を絡みつけた。
「なら…副隊長を私にください。私なら副隊長を絶対に離したりしません。」
2人が驚いている隙に勝手に入ってすみませんと言ってから、そのまま副隊長を連れ出す。
ギュッと腕を掴んだまま離さず廊下を歩く。
「ちょ、ほんまに離せって!三浦!!自分が何してるかわかっとんのか!?」
無理やり引き剥がそうとしないのは、私が怪我をするとでも思っているのだろう。
優しい人…。
それをいいことに私はそのまま彼を引っ張っていって許可もなく副隊長室に入り、椅子に座らせて私はその膝の上に向かい合うように座った。