第31章 Lost Love✿保科宗四郎✿
悠稀の命日。私は墓石に手を合わせた。私の解放戦力がもっと高ければ、もっと素早く動けていたのならば…"もしも"ばかりが頭に浮かんで、前に進めない。
「また来るね――今でも大好きだよ、悠稀」
後ろ髪を引かれながら墓地を後にして、龍寧神社へと向かう。時永悠稀の魂が祀られている場所。たくさんの仲間たちが眠る場所。そこにたった一つ、蹲っていたのは――保科副隊長だった。
遠目からでもわかる、防衛隊員には小さめの体躯。紫かがった黒髪が風に流れている。いつもよりも小さく見える彼の背中は、防衛隊第3部隊副隊長ではなく、たった1人の親友を思う、哀れな男だった。
何度も彼を責め、幾度となく、傷を抉った。申し訳ないとは思っている。彼は悪くないとわかっている。それでも、行き場のない怒りや悲しみ、苦しみ、辛さが私を支配して、言葉がナイフになる。
「ごめんなさい、保科くん…」
部下や仲間としてでなく、今はただ、友人としてあなたに謝罪しよう。同じ苦しみを抱えた、残された者として__。
ゆっくりと近付いていき、小さな背中に僅かに触れた。いつも気配にすぐ気付くはずの彼は、ビクッと肩を震わせて、こちらを見上げる。
「三浦っ……すまん…ごめっ、ごめん…ごめんなさい…僕が…悠稀を殺した……僕が…はっ、ぁ…はっ…」
「っ!保科くん、ゆっくり息を吐いて」
過呼吸のような症状を見せる副隊長に、落ち着いて声をかけ、背中を摩った。