第31章 Lost Love✿保科宗四郎✿
苦しさに喘ぎながら震える肩を落ち着かせるように、優しく抱き締める。ほら――この人も、こんなにも苦しんでいる。零れるその涙は、息が出来ない苦しみと言い聞かせているのだろう。
「保科くん、今までごめんね。保科くんは悪くないから…謝っちゃダメだよ」
「っ、はぁ、はぁ……三浦、ごめん。ごめん…」
今にも消えて失くなりそうな声に、背中に、凍えそうな手を添えて温め合う。大切な人を失って凍える心を二人で寄り添って、いつか花を咲かせることが出来たら__。
「三浦っ…!はる、きが…悠稀がっ……僕に、頼むって……君を、この国を…僕は、託されたっ…!」
なんのことかわからなかったが、「そっか…」と胸に縋った哀れな男を、哀れな女が抱き締めた。"悲劇のヒロイン"でいるのはもうやめる。罵声も避難も何もかもを独りで受け止めたこの人を、支える為にこれからは生きよう。
まだ冷たさが残る春の風を二人で受け止めて、静かに…でも確かに地面を踏み締めて、立った。支え合っていた悠稀のように、私もこの人と支え合って立っていよう。私たちは物でもなく、怪獣でもなく――"人"なのだから。
_____________....Continued.