第30章 嫌い…だと思っていた✿保科宗四郎✿裏
朝目が覚めると目の前に宗四郎さんの顔があって焦る。さすがに顔が良すぎて照れてしまった。いや、それだけではない、昨日あんなことをされたんだ。無理やりされたのは嫌だったが、優しい彼に絆されていく自身に気付いている。
宗四郎さんを起こさないようにゆっくり腕の中から抜けて、ご飯の準備をする為に部屋を出ようとすると、手首を掴まれて動けなくなる。
「一緒にいよや。好きやよ…」
誰と勘違いしてるんですか。好きなってしまった後にこれはきつい。早くこの気持ちを振り払わなければ…このままずっと一緒にいるのなら、宗四郎さんを好きでいてはダメだ。愛されることはないから、ずっと辛い思いはしなければいけない。私を無理やり抱いた人にこんな想いを抱くなんて…。
手首が掴まれたままで一向に離してくれる気配はない。顔を見ても起きているのかわからない。ぐぅーっと顔を近付けて目が開いているのか確認する。確認が出来る前に一瞬だけ唇が重なった。キスされた…私の初めては全て宗四郎さんに奪われる。
だんだんと顔が熱くなっていき、離れることも出来ずにいると、目の前に赤紫が現れた。
「……何しとん」
「起きているのか確認しようと…」
ふーんと自身で掴んでいる私の手を持ち上げて凝視する。すると、いきなり腕を引かれて宗四郎さんの上にダイブしてしまう。重いだろうと思い、慌てて起き上がろうとしたが、そのまま抱き締められて、もうちょい寝よと宗四郎さんは目を閉じた。
心臓の音聞こえそう…ご飯の準備があるのでと胸を押すと、昨日のもほとんど君が作ったんやろと言われる。
「母さんの味やなかった。美味かったで。朝も期待しとる」
寝起きフィーバーですか…元々こういう人なのだろう。普段はわざと冷たくしているんだと思う。頭を撫でながら手を離され、今度こそキッチンへと向かった。