第30章 嫌い…だと思っていた✿保科宗四郎✿裏
お昼頃になるとお義母さんにそろそろつくという連絡がきたようだ。つくのはお昼になると前もって言われていたので、一生懸命ご飯を作った。別に宗四郎さんに食べてもらいたいわけではない、お義母さんが喜ぶからだ。
「美影さん、出てきてくれん?きっと宗四郎やで」
インターホンが鳴ったのではいと返事をして玄関に向かう。宗四郎さんの顔も声も知ってる。玄関の扉を開ければ、糸目のオカッパが立っていた。相変わらず、顔だけはいい。
「…ただいま。美影〜会いたかったで〜!」
一瞬無言だった彼はすぐに笑顔になり抱きついてきた。いきなりなんなんだと思ったが、私の後ろにお義母さんが来ていたらしく、耳元で黙ってと言われた。
お義母さんが先にご飯を食べようと言ったので、宗四郎さんの手を握って行きましょうと声をかける。意外と手おっきいんだな…なんて思いながらリビングに向かい、コソコソと話す。
「わかっとるやろな、ニコニコしときや。僕のこと大好きなバカ嫁演じとけ」
バカ嫁って…旦那のことはみんな大好きだと思うのだが…というか、ご両親には私の性格を知られているから少し厳しいかもしれない。そもそも私たちは親に決められた相手と結婚するのに、どうして仲良くしなきゃいけないのか…ご両親はとてもいい人たちなので嬉しいけど。
ご飯を食べ始める宗四郎さんを見る。私はほんの少ししか手伝っていないと言ってもらっている。別に宗四郎さんの為に作った訳じゃないから、わざわざ作ったなんて言いたくない。どうやら美味しいようだ。