第30章 嫌い…だと思っていた✿保科宗四郎✿裏
「美影さん、宗四郎とは連絡取っとるん?」
「はい、毎日連絡をくれます。昨日の夜も寝る前に電話してて…」
何故私が婚約者の為に嘘をつかなければいけないのか。婚約が決まった日、両親にはこまめに連絡を取り合っていると伝えろと言われて、それから一度も来ない連絡をあたかもあるように彼のご両親に伝える。
まだ結婚をしていないのに私は婚約者である保科宗四郎の実家に住み、毎日ご両親と暮らしている。会ってもいない婚約者よりもご両親と仲良くなってしまった。
そんな時、婚約者である保科宗四郎がまとまった休みをもらい、帰省するそうだ。彼のお兄さんである宗一郎さんも明後日非番の為、明日帰ってくると言う。宗四郎さんが帰ってくるのも明日、ちょうど兄弟の帰省が重なって、ご両親は嬉しそうである。
夜、お風呂から上がり部屋でゆっくりしようと宗四郎さんの部屋に入る。私の部屋は宗四郎さんの部屋になっている。なるべく変なところに触らないよう、ほぼベッドのみ使わせてもらっている。ベッドに座るとスマホが鳴った。
「あー、明日のことなんやけど…」
宗四郎さんだ。明日帰ってくるので、その時の話のようだ。あれから初めての連絡がこれなんて…帰ってくるのすら私には教えてくれなかった。正直、会いたくない。私をそんな風に扱う人となんか、結婚したくない。
明日は出来るだけ一緒にいて余計なことは話さず、隣でニコニコ笑っていろと言われた。宗四郎さんに緊張していると言えば、黙っているのも納得させられるだろうと。わかりましたと答えてスマホを置き、もう寝ようと布団を被った。