第26章 虚虚実実✿保科宗四郎✿裏
怪獣討伐を終えて基地に戻ってきて、こっそり自身のロッカーへと向かい、痛めた左腕と右手首を治療する。標的に近付き過ぎて左腕を攻撃され、右手で体重を支えたことによって痛めてしまった。スーツを着ているというのに何をしているんだか…。
包帯を隠す為手袋をはめて執務室へと向かう。怪我をしていることがバレれれば、優しい彼はきっと私の分の仕事まで奪ってしまう。私が小隊長で在るのは、副隊長という激務を熟す彼の補佐の為でもある。そんな私が彼に負担をかけることは許されない。
お疲れ様ですと声をかけて任せられた仕事を熟す。カタカタとキーボードを叩いていれば、手首が悲鳴を上げている。
なんとか痛みに耐えて、午前の業務は終わらせた。次の難関はご飯なのだが…食べやすい物にしよう、カレーライスならスプーンだし比較的簡単に食べられそうだ。
手に力が入らない…ぷるぷるしながら食べ進めているが、おにぎりとかサンドイッチにした方がよかったと後悔する。
すると突然スプーンを奪われ、カレーを掬って口の中に入れられた。
「おかしい思っとったら…怪我しとるんなら無理するな」
バレていた。そりゃあずっと一緒にいれば隠し事なんて出来ないか…。
「仕事は出来るから…」
そのまま食べさせられて、注目を浴びてしまう。自分で終わりにしたくせに優しくしないでよ。私も悪いのはわかってる、わかってるけど…終わらせたのはあなただ。