第22章 マッサージは口実✿保科宗四郎✿裏
なんとか腕立てを終わらせて保科くん!と駆け寄ると止められて、ウエットティッシュで頬や手を拭かれた。乙女の顔になんてことを…ちらっと机の上を見てみるとノンアルコールのウエットティッシュだったが、毎日保科くんに会うのに、荒れたらどうしてくれる。
「よし、触ってええで」
潔癖ですか?というか私は子供ですか…なんか、女と見られていない気がして悔しかった。自分の行動を振り返ればその対応もやむを得ないのだが。
「保科くん、今日保科くん家行ってもいい?マッサージ!」
「ほんま元気なやっちゃなぁ、ええで…せやけど、そろそろ警戒しぃや、ほんま」
警戒?保科くんの家に行くのに?保科くんが私に何かすることなんてないだろう、そういう対象としては見られていないようだし。それに、してくれたって私は構わない。保科くんにだったらされたいとさえ思っている。
私はすでに業務を終わらせたが仕事量が多い副隊長様は、まだまだ残っているようだ。手伝えることあったらいいのにな…毎日遅くまで残って睡眠時間まで削って…正直、保科くんの体調が心配で堪らない。だけど保科くんはお前みたいんが心配するなんて100年早いわとか言われそう。
後ろから肩に腕を回しその丸い後頭部を胸に埋める。柔らかいかどうかはわからないが、ハグにはストレス軽減やリラックスの効果があるはずだから、気休め程度にしかならないだろうけど、労いたかった。
「急にどしたん?」
「保科くんのストレスを吸い取ってます」
「ははっ、なんやそれ…吸い取ったらあかんで?消滅や消滅」
保科くんが顔を上げて見上げてくるので、その圧迫で少し胸が形を変える。こういうことを気にしないでやってくるので、彼の方が何枚も上手なのだ。
こういうことをよくみんなの前でやってるから、付き合ってるなんて噂が出回る。保科くんには申し訳ないが、私は嬉しい限りだ。誰にも取られないで済む。