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魅惑の恋【保科宗四郎多めごちゃ混ぜ短編集】

第19章 弱った副隊長は✿保科宗四郎✿


保科副隊長は胃の部分を押さえながら隊服を握り締めていた。もしかして…この炎天下で訓練をしていたからではなく、ストレス等から来るものだろうか。彼が日頃ストレスを抱えているのはわかっている。あまり眠れていないのもわかっている。
それは副隊長という責務がどれ程なのか伝わってくる程…。

誰にも気付かれないようにこんな隅のトイレで1人苦しんでいたのだろう。人が多くいる庁舎へ向かおうとすれば、まだ嫌や…と腕を引っ張られる。

「副隊長…なら、今日はもう休んでくれますか?」

「無理や…まだ、残っとる…」

嘔吐きながら私の隊服を口に押し当てた。この人は…本当に仕事人間だな。いや、仕事と言うより…亜白隊長を支えたい、その一心なのだろう。ここにいるどの隊員よりも副隊長が彼女を尊敬しているのを知っている。

私が出来ることはありますかと尋ねながら近くの部屋に入り、ゆっくりと床に座らせる。本当は椅子に座らせたいし、床なら何か敷きたい。だが生憎そのようなものはなく、私の隊服はすでに副隊長の涙や胃液塗れになっている。

こんなに弱っている副隊長は初めて見る…と不安になりながら背中を摩り、何かないかと辺りを見渡す。すると、何かの袋のような物を見つけ、隊服よりはいいだろうと彼に持たせる。

「ほんま、すまん…こないなことさせて…もう行ってええで…」

「体調悪い時って、心細くないですか?すでに勤務は終わっていますし、落ち着くまでいますよ。大丈夫です、誰にも言いません」

「……ありがとう、三浦…」

私の名前、覚えててくれたんだ…胸がぽかぽかと温かくなり、込み上げてくる何かを押さえる為に抱き締めたくなった。さすがにそんなことは出来ないので、どういたしましてと答えながら背中を摩り続けた。
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