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魅惑の恋【保科宗四郎多めごちゃ混ぜ短編集】

第19章 弱った副隊長は✿保科宗四郎✿


それは突然起こった。

基地内の隅の男子トイレを通りかかった時、激しい嗚咽が聞こえ、具合が悪い人でもいるのかと、倒れたりしないだろうかと色々考えてから、男子トイレということも忘れ、急いで中へと入る。

扉が閉まっているのは1つだけ。すぐにその扉をコンコンと叩き声をかける。

「あ…誰……う"っ!…大丈夫やから、どっか行ってや…」

この声、保科副隊長…そう思い、鍵を開けるよう頼み込む。あまりにも苦しそうな声で言葉を発し、嗚咽を漏らす彼が心配で堪らなくなり、開けないのであれば無理やり入りますと声をかけると、ガチャっと音が聞こえたので、扉を開け中を覗く。

少し吐瀉物の匂いがして便器を覗き込むが、すでに流された後だった。

大丈夫なのかと声をかけ、どこが悪いんですかと体調が悪いのはすでにわかっているので、畳み掛けるように聞く。

すると、なんもない…とふるふる首を振って答えるので、青ざめた顔を見つめ額に手の平を当てた。ほんのりと熱が伝わってきて、微熱があるのだ気付いた。

「ちょっと頭痛いだけや…すぐ治る……う"っ、え"ぇーっ!」

「それ、ちょっとじゃないですよ!?体調が悪いならちゃんと休んでください!」

少し喋るとすぐに嘔吐き、便器の中に少量の胃液を吐き出す。

頭が痛いだけで吐き気や嘔吐をするのは危険なはず…すぐに病院に連れて行かないと…いや、医療棟に行って診てもらおう、医療棟なら敷地内にある。脱水症状も起こしているように見える。

「外で訓練してましたか?」

か細い声で肯定した保科副隊長を見て、熱中症か脱水症状だろうと思い、すぐに涼しい場所で水分を取らせようと肩を抱きながら腕を引っ張る。

「無理や…出る…」

今から誰かをここに呼ぶのも来るまでに少し時間がかかるだろう。隊服を脱いで保科副隊長の口元に当て、汚してもいいですからと声をかけてからトイレを出た。
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