第2章 無口な彼女が啼く時✿保科宗四郎✿裏
「保科くん。」
「ん、なんや?ちゅーか、名前で呼んでええ言うとるやん。一緒に住んどるねんから。」
3日前、女の子を拾った。
女の子と言っても、高校生か大学生くらいだろう。
ボロボロで路地裏に蹲っていてそのままには出来ず、お持ち帰りをさせてもらった。
家に連れて来た時はほとんど何も喋らず、名前を聞いたら美影とそれだけを呟いていた。
家に帰らんの?と聞いても首を横に振るだけ。
ボロボロで汚れていた為、洗ってあげたのだが、普通に女の身体をしていて、理性が飛びそうになっていたことは、彼女にバレていないだろう。
今は、僕の名前を教えたら保科くんと呼び、それ以外はほとんど喋らない。
「で、どしたん?」
声をかけても俯くだけで何も喋らない。
何か言ってくれないとわからない。
正座をして太腿を擦り合わせモジモジしている。
全然わからへん、なんや?触って欲しいんか?
そんな煩悩が頭を駆け巡ったが、今までそういうことをしていない為、いろいろ聞いてみる。
トイレに行きたいのかと思ったが、それなら勝手に行くだろう。
「なんかして欲しいことでもあるん?なんでも言うてええで?」
優しく声をかけるが、やはり何も喋らない。
今まではなんとなくわかっていたのだが、今回はまったくわからない。
「腹でも痛いん?なら、トイレ行き?」
例え下痢だとしても恥ずかしいことではない。
生理現象なのだから。
頷いたのだが、トイレに行く素振りは見せない。
「……ご、ごめん、なさい…。」
喋った。
保科くん以外を口にしたことを初めて見たので驚いてしまう。
「なんで謝るん?僕がいない間になんかやらかしたん?」
僕は先程、仕事を終わらせて基地から帰ってきたばかりなのだ。
仕事中に何かしてしまったのだろうか。
泣き出してしまった。
なんか、やばいことでもやらかしたん?
帰ってきた時、何も違和感は感じなかったのだが…。