第2章 私の大好きな人✿保科宗四郎✿
防衛隊第3部隊に入隊して2年。
私は今日も大好きな人に付き纏う。
「副隊長〜!今、暇ですか?」
「見てわかるやろ、忙しいわ。」
だがすでに勤務時間は過ぎている。
副隊長〜、副隊長〜と呼び続けるが、反応はなくなってしまった。
書類から目線を外すことなく黙々と仕事を続けている彼を眺めながら、私いつ言うんだろうと自分のことを他人事のように考えていた。
こんなに付き纏っているのに気持ちを伝えたことはない。
気付いているかもしれないが。
いくら呼びかけても反応がないので聞こえていないのだろうと思い、ずっと口にしたかったことを呟いてみる。
「そ、宗四郎さん…。」
「腕立て50回。」
なんですか!その反応は!
一切私の方を見ず、声に抑揚もつけずに言い放った。
許可もなく上官を下の名前で呼んだ私が悪いと思い、その場で床に手をついて腕立てを始める。
あぁ…どうしたらこの男は私を見てくれるんだろう。
押してダメなら引いてみろ、とか?
そんなことをしたら本当になんの接点もなくなってしまいそうで怖い。
「三浦、お前…この際やから言うけど……ほんまにうざい。四六時中付き纏わんでくれん?」
仕事中は確かに悪いと思っている。
だが、あなたが仕事をしていない時間を知らないのだ。
こんなはっきり言われてしまっては気付いてしまう。
彼は私を好きになってくれるどころか、嫌いだと…。
好きな人とは一緒にいたいと思ってしまう。
それがこの結果だ。
「す、すみませんでした…っ…。」
腕立てを終わらせ彼に謝ると泣きそうになってしまったので、急いで副隊長室を後にした。