第10章 夕方
そうこうしている内に夕方になっていた。
まぐさんは別の用事があるとエリトラでどこかに飛び立ち、僕たちもそろそろお開きにしようというところでオウムちゃんのことが気になった。
そうだ。この世界にはオウムちゃんの家がない。
オウムちゃんは元オウムだから家とかはいらないかもしれないが、今はあんなに可愛い女の子だ。僕の家に泊まらせるしかないか、とオウムちゃんが水槽のジンベイザメを眺めるのに夢中になっているところに声を掛けようとしたら。
「ヒカック、ちょっといい?」
ぎぞくから改まった口調で切り出される。いつものふざけた顔じゃないので、僕は妙に緊張した。
「何? ぎぞくさん」
僕はそう聞いてぎぞくの言葉を待った。
「あのオウムちゃん、ちょっと変じゃない?」
とぎぞくは言い出すのだ。なんてことを言うんだと僕は言い返そうと口を開きかけるが、ぎぞくは矢継ぎ早に次の言葉を言ったのだ。
「あの時のオウムって、水色だったでしょ?」
「え?」
そんなはずはないと僕はオウムちゃんを見る。オウムちゃんは赤いオウムと同じ色のあるワンピースを着ている。そう言われると、確かに赤いオウムじゃなかったかもという気もしてくる。
「それに、あの時のオウムって、ヒカックが手振った時に……」
「それは」
そうなのだ。そこは僕もずっと違和感があった。
僕はあの爆発事件のあと、唯一生き残ったオウムにうっかり手が当たってしまい、亡きものにしてしまった。僕はそれはよく覚えていた。オウムはもう、生きていないのだと。
「だから一旦あのオウムちゃんはあそこに置いておこう。明日、誰かにあのオウムちゃんのことを調べてもらって……」
「でも、オウムちゃんを一人にするなんて」
それでも、オウムちゃんを一人にするのは心配だったし普通に嫌だった。この辺りもかなり発展はしているけど、ちょっと森に入ってしまえば敵も湧いているだろう。
「今さっきぽんPには同じ話して、先にコハロンさんと一緒に帰ってもらった。あそこに小さな豆腐建築しとくからさ、今日は一緒にいない方がいいと思うんだよね」
とぎぞくが言うように、いつの間にかぽんPもコハロンもいなかった。僕はオウムちゃんの方を何度も振り返った。
「どうする? ヒカック」
ぎぞくが聞いた。
「僕は……」