第6章 穢れた過去
そして嫌な予感は的中する
地下駐車場には
彼女の姿が無く、
代わりに彼女の身につけていた
帽子が落ちていた。
私は車のキーに付けていた
GPSを起動させて
警察に電話した。
**
バタバタ…
警察からこの病院に搬送されたと
連絡が来て、
ひとまず生きていることに安心した。
走って病室に入ると
既に目を覚ましている〇〇と目が合う。
目の奥が……荒んでいる。
『菱……、
あ、色々と動いてくれたんだよね…
ありがとう^^ 』
なんであんたが無理して笑うのさ。
「〇〇…ごめん…
私がついてれば……
ごめんなさい…」
ベッドの上に項垂れて
涙を流す私の頭を撫でながら
『ううん…いいの…
菱……大丈夫…
大丈夫だから…』
そういう彼女の言葉に
力強さはなかった。
それからしばらく入院生活が続いた。
彼女の体は今回の件がなくても
ボロボロだったのだ。
私は監督不行き届きで
クビにされてしまった
それでも彼女の元への
お見舞いは欠かさなかった。
もちろんプライベートの素の私で。
ある日、
例の彼氏が病室に居て…
入るタイミングを伺っていた。
「だから…俺たち…別れよう…」
という言葉が聞こえた
『……うん…分かった。』
入院している彼女に言うことなのかと
耳を疑ったが…
こちらに歩いてくる元カレに
今来たところを装うため
ガラッ…
「あっ、すいません、…」
と、わざとぶつかって見せた。
「あっ、いえ、こちらこそ…//」
と、少し頬が緩んだのを
私は見逃さなかった。
私は咄嗟に体重を掛けて
ボキッとヒールを折り、
「あ、あの、…すいません…
ヒールが…折れてしまったので…
助けて貰えませんか…?」
と、その男の懐に入った。
どうして別れたのか、探りたかった。
そして、もしそれが、
この男の理不尽なら絶対に報復すると誓った。
私たちは病院のすぐ側のモールで
ショッピングを楽しみ、
カフェでコーヒーを飲んでいた。
「…あの…俺と〇〇の話、
聞こえてました?」
と、唐突に向こうから話し始める。
「いいえ?…
聞こえていたら
ぶつかったりしません…」
会話を聞いていたと分かると
警戒されるかもしれないので
素知らぬ振りをする。
「そ、そうですよね。」