第18章 人生の転機
煙草を吹かしながら
こういう社長は
娘を想う父のような顔をしていた。
その様子に少し安堵するレン
「……クス……
ありがとうございました。
これで彼女に胸を張って会えそうです。」
「……フッ…そうか。」
社長の口角が少し上がったのを確認して、
「…あの…彼女になにか伝えることってありますか?」
と問いかけてみる。
「あ?……
フッ…そうだな。
あいつ、ココをやめてから、
母親に支払ってた分の金を
この事務所宛に振り込むようになりやがった。
だから、
”余計なお世話だ。
そんなのより、たまに顔見せろ”
って言っといてくれ。」
と、悪戯っぽく笑う
マフィアのボス面の社長に
「……クス…
了解っ♪
また、何かあったら
来させていただきます」
と笑顔で返すレン。
「……フッ…
気軽に来るんじゃねーよ。
娘の彼氏と話すみてーで
気まずいんだよ。」
「……みたいじゃなくて
そうなんじゃないですか?」
「……チッ…
早く帰れ。」
**
「じゃあ…
本当にありがとうございました」
深々とお辞儀をするレンに
社長椅子からコチラを見ずに、
シッシッと厄介者を払うかのような仕草をする社長
パタン…
そして、事務所ビルの廊下に出て
社長に教えてもらった
児童相談所の場所を
地図アプリで検索する
社長から
「アイツの家庭での諸々は
児童相談所の当時の担当者が詳しいだろう」
と言われ、
連絡先を教えてくれたのだ。
彼女についてもう少し知りたいレンは
足早に向かった。
**
一方その頃…
〇〇side
自宅で一人、
明後日のシャイニング事務所への返事に向けて
入念な準備を進めていると…
ピンポーン
と、家のチャイムが鳴る。
「…??」
(こんな夜遅くに誰だろう?)
と思って、
インターホンの画面を見るが
何も映っていない。
不気味に思い、
居留守を使っておく。
念の為菱に連絡すると、
明日は外での打ち合わせは避けて、
リモートで会議しようとなった。
〇〇は菱からもらった
スマート防犯ブザーをカバンから取り出す。
作業を終えてから、2階にあがり、
心許無いブザーを握りしめて
震えながら夜が明けるのを待つしか無かった。
END