第18章 人生の転機
「……あいつと俺が初めて出会ったのは、
小学校1年の時…あいつが7歳の時だ。」
と語り始める。
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父親と名乗る男に連れられて
この世界に飛び込みたいと、言ってきた。
大した真贋眼があるとは思っていなかったが、
あいつのとても7歳とは思えない
強い眼差しに只者では無いと感じてしまった。
俺は二つ返事で□□と契約した。
それから、子役として
デビューを果たして、順風満帆、
あいつの人生は華やかなものになっていった。
いや…俺の目には
そう見えていた……
小学校を卒業する頃には
あいつも大分大人びていて、
その辺の高校生と同じくらいには
精神的にも身体的にも成長していた。
だが、そんな奴が
ある日泣きながら事務所に飛び込んできた。
よく見ると
手首や首筋に赤い跡があって
服の肩の部分がちぎられてた。
何があったのか聞くと、
初めて事務所に来た時に一緒にいた父親に
性的虐待を受けていると…
震えながら…そう口にした。
あいつの実の父が死んでから、
母親は男を取っかえ引っ変えする人間に
変わってしまったそうだ。
そして、再婚相手に選んだのがその男だった。
実の父の早すぎる死に、
育児放棄気味の母親に、
パラフィリア(性嗜好異常者)の義父。
俺は直感的に理解した。
こいつがあれだけ大人びた顔をしていたのは
家庭という小さな世界で
日々絶望を味わっていたからなんだと…
俺は直ぐにこの子を
助けなければならないと思った。
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「……」
話を聞くだけでも
絶望的な気持ちになる彼女の過去に
レンはどんどん背筋が凍って行った。
同時に
親に愛されたい気持ち。
その気持ちが痛いほどわかるレンは
息を飲んで次の話に耳を傾ける。
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俺は□□が住み込みで
うちの事務所で働いてもらうことを
合法にするべく、色々と画策した。
幸い、アイツの母親は
自分の娘を恋敵ぐらいに憎悪していたから
父親がいない間に
母親に相談を持ちかけ、
彼女のギャラの何%かを
母親に振り込むことを条件に承諾を得た。
こうやって、なんとかアイツを
家庭から引っ張り出すことが出来たんだ。
今考えてもあの選択は間違っちゃいないと思ってる。
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