第18章 人生の転機
「……彼女がここの売れっ子になれたのは
彼女自身の努力の賜物だ。
いざって時に自分を守れない事務所に
居たくないって思うのは当たり前だろう。」
そう言って、
強面の社長にも怯まず立ち向かうレン。
その心意気に
「……フッ……面白ぇじゃねーか。…
……お前の覚悟は分かった。
いいだろう。話を聞いてやる。」
とニヤリと笑う社長。
意外と可愛く笑う社長に
「え……?」
とキョトンとするレン。
「いやぁ…あいつ、無駄にモテちまうせいで
今までも元カレやらストーカーやらが
わんさか来て大変だったんだ…
まぁ、大体はこの顔にビビって
居なくなるんだけどな。
前の3人にもしたが、
通例の儀式だと思ってくれ。」
そう言って笑いながら
煙草をぐしゃっと灰皿に押し当て殻にする。
どうやら〇〇を悪く思っている訳では無いらしい。
少し警戒しつつも
「と、ということは…
教えてくれるということですか?…」
と聞くと
「……まあ、
お前があいつの何なのか…によるな。
こっちもあいつの親代わりみたいに
思ってるところがあるからな。
なんでもない奴にあいつの身の上話を
教えるわけにはいかねぇわな。」
と言われる。
「………それを、判断するためにきました。」
「……あ?
どういうことだ?」
「……俺は彼女と別れようか悩んでいます。
強い彼女より、
もっと守ってあげたい存在が居る…
でも、仲間に言われたんです。
彼女の過去を知ったら、
考えが変わるかもしれないって…。」
真剣な表情のレンに
「……なるほどね。」
と言いながら
椅子にもたれ直す社長。
そして
「……そういうことか…
……じゃあ、”全部”は俺の口からは言えねーな。」
と、少し素っ気ない感じに戻る。
「……なんでもいいんです。
俺が知らない…彼女の過去を
教えてください。」
入口の扉の前で
綺麗にお辞儀をするレンを見て
「………」
少し考えてから
「…まあ、いいだろう。
アイツがこの事務所に入ることになった経緯と
この事務所を退所するまでの間の話をしてやろう。
ざっくりだがな。」
そう言うと、
隣の応接室にレンを案内し、
ソファに座って向かい合う。
そして、
また煙草に火をつけて…