第18章 人生の転機
彼女の人生の第1章が
あまりにも残酷で波乱で
言葉を失うレン。
同時に、
こんな過去を持ちながら
強く優しく生きている彼女に
尊敬の意が湧き上がってくる。
「ここまでがアイツがこの世界に入るまでの話だ。」
「……言葉が…うまく出ない…
彼女はそんな過去を抱えているように
見えないですから…」
「仕方ないさ。
俺も6年くらい勘違いしてたからな…
小学生だぞ?普通何かサインを出すだろ。
……とどのつまり…
あいつは生粋の大女優なのさ。
□□は器用すぎる。
甘え上手みたいに見せちゃいるが、
あいつの心の底に沈殿された
深い闇は絶対に他人に見せないようにしてる。」
「………そんな彼女を俺は……
(俺の愛されたいという我儘で傷つけてしまった…)」
彼女との過去を振り返り、
今後を考え始めるレンに
「まあ、もう少し聞いていけ。」
と、新しい煙草に火をつける社長。
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俺はあいつに部屋を貸してやった。
ネグレクト母のおかげで
ある程度一人で生きていく力があった彼女は
逞しく生きていた。
仕事も順調に増えていった。
俳優業に加えて
ティーン雑誌の読モや
大手ブランドのアンバサダーとして
コレクションに出られるほどになった。
その頃にはうちの事務所も
こんなオンボロビルじゃなくて
都心のビルにオフィスを構えられるほどになっていた。
しかし、この頃から
幼少期の”愛の飢え”が
あいつの心を蝕み始める…
同じ雑誌のモデルや、
撮影の共演者が次々にあいつの表の顔の虜になり、
あいつに愛を囁くようになる。
そして、□□もその愛の虜になる。
【回想】
”「お前、その痣どうした!?」”
”「えへへ…
彼氏に、他の男に色目を使うなって、
殴られちゃった(^^)」”
”「あ、でも、撮影には影響ないところに
してくれてるから…だいじょ」”
ギュ…
”「し、社長!?」”
”「お前、もっと自分を大事にしろって。」”
”「?
……大事だから嫉妬しちゃうんでしょ?」”
ーーー………
本当に不思議そうな顔をする□□に
俺は何も言ってやることができなかった。
あいつは
歪んだ愛でさえ、受け入れちまうんだ。
「私は何をされても大丈夫だよ。」
これがあいつの口癖だ。
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