第18章 人生の転機
「なんでイッチーにそんなことを
言われなきゃならないんだ。
これは、俺とレディの問題だろ。」
他人が口を出すなというレンの意見に
「いいえ、〇〇さんの問題は
恋人である私たちの問題です。
それに、……
もう、彼女を傷つけてはいけないんです。」
グッと力強く拳を握るトキヤをみて
「なんでそこまで……
さっきも言ったが、レディは強い…
色んな人から愛されて育って、
俺たちのねじ曲がった愛まで受け止めて
何をしてもいいなんて言ってくれる…
そんな器の大きい人だ。
それに比べて子羊ちゃんは色々と危うい。
俺たちで守ってあげないといけな…」
レンの必死な言い訳に
「やめなさい!」
と、強く言葉を遮るトキヤ。
そして、
泣きそうな、消えそうな声で
「彼女は……彼女は、……
愛されて育ってなんていません....
今まで、死にたくなるような苦汁を舐め、
それでも気丈に振舞っている。
強いひと…強すぎるくらいに…
でも、その強さは愛に依存している。
彼女は愛されたいから……
だから私たちを…こんなに、愛してくれているんです。」
トキヤから出てくる言葉に
頭が追いつかないレン
「……?
ど、どういう……
彼女が愛されてないわけ…
……だって……あんなに、……」
トキヤも最初に鳳瑛一に聞いた時は
耳を疑ったので、
レンの気持ちが痛いほどわかる。
彼女は愛を信じている。
だから急に自分達が同棲を解消しても
何も言わず見守ってくれていた……
「そうです。
私たち4人…いや、今までの男全員が
彼女の人生を賭けた演技に騙されている。
いや…彼女自身、自分自身を騙していることに
気づいていないかもしれない…」
「イッチーは、
なんでそんなこと知ってるんだい。」
「黒崎さんとカミュさんと
調べたんです。
彼女の過去について……
とても辛い過去です…
でも、別れる貴方に
勝手に全てを打ち明ける訳には行かない。」
「な…」
「ただ、言えることは
私たちは彼女のことを
全然分かっていなかったということ。
彼女が愛されて育ったから、
あんなに慈しみ深い訳ではないということ。
……それだけです。」
ここまで伝えておいて、
突き放すトキヤ。
しかし、これが
彼なりの仕返しなのだろう。
自分の恋人を傷つけたことへの…