第17章 代替品の恋慕
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〇〇side
『ハァ…ハァ…』
(どれくらい走ったんだろう…)
撮影場所からだいぶ離れた場所まで来て、
少し屈んで息を整える〇〇。
すると
「おい…どうかしたのか…」
と声を掛けられる。
『あ、いえ…大丈夫です…』
滴る汗を拭いながら体を起こすと
「誰かと思ったら〇〇…か…?」
と瑛一の心配そうな表情が目に映る。
『瑛一…どうしてここに……』
「ヴァンの様子を見に来たんだ。
今日が撮影最終日と聞いてな。
…お前も出ていたんだな…」
と、言われ
『そっか…そうだったんだ
桐生院さんの演技、凄かったよ^^』
笑顔で誤魔化す〇〇。
しかし、
「どうした?
泣きそうな顔してるぞ」
『……してない。
ちょっと、気分転換に走ってたって言うか……』
「気分転換って…どうした…」
付き合っていた頃のような
優しい声で心配されて
思わず声を上げて泣きそうになる。
(ダメ…、
ここで瑛一を頼ったら。)
頭では分かっているが、
(じゃあ、他の3人に
このこと伝えられる?
無理でしょ?
皆…SSSで忙しいし…
レンが春歌の方に行くなら…って
全員そっちに行くかもしれないよ?)
と、自分の中の悪魔が囁く。
(確かに……)
そう思ってしまった一瞬で
涙腺が緩み始める。
ポロ…ポロ…と、
涙が頬を伝う。
ここ数日我慢していた感情が
溢れて止まらなくなる。
「お、おいっ…大丈夫か?
本当にどうしたと言うのだ…//」
久々に見る彼女の涙に
焦るのと同時に
自分に気を許してくれたのだと
安心する瑛一。
『う……
なんでも、な…ぃ、(。•́ωก̀。)…グス』
それでも頑なに口を閉ざす彼女に
「分かった…言わなくていい。
こんな姿見せられて、放っておけるか。
家まで送ってやる。
お前、今日はマネージャーと一緒か?」
『…… (フルフル…』
密室で2人きりになるなんて、
絶対ダメだって分かってるのに。
今日は誰かに甘えたい気分だった。
結局、瑛一に連れられ、
彼の車の助手席に乗り込む〇〇
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暫く静かに車を走らせる瑛一。
少し勇気を振り絞って、
「…大丈夫か?
何かあったのか…?」
と声をかけると
『………』
返事がない。