第17章 代替品の恋慕
「大切なんだ…レディが…
昔の俺は、誰のものにもならないと
愛の伝道師を気取って、
でも、いつも心は空っぽだった。」
レンの頭の中に
七海春歌との記憶が
一気に湧き上がってくる。
「そんな俺に、
レディは音楽という扉を開き、
温かな光で行く手を照らしてくれたんだ…
だからこそ俺は
自分よりも先ず、
彼女の幸せを願っている…」
遠い目をして語るレンの話を
真剣な様子で聞くヴァン。
「……」
「今のレディは、
SSSの決戦ライブに向けて
仕事に打ち込むべき時だ。
彼女自身、
何より音楽を愛している。
だから、今はじっと大切に見守りたい。
それが俺の本気…
俺の愛し方だ。」
そこまで言いきったレンに対して
「フッ…」
と笑みをこぼすヴァン。
「素直に認めるわ…
ワイの負けや。
ただし、今のところは、や。
アンタの本気がちょっとでも揺らいだら、
…その時は覚悟しいや…」
「クス……なるほどね…
でも、覚悟の必要は無いね。」
「ハハッ!
アンタ最高や!
ワイ、心底アンタとデュエットしたい!」
〇〇はこの辺りで聞いていられなくなり、
『修斗くん、見つけたっ!』
と、コソッと修斗に近寄り
トントンと肩を叩く。
「お姉ちゃん……
今、お兄ちゃんたちがいて…
それで……」
なぜか少し泣きそうになっている修斗を
抱き抱える。
泣きそうな顔を見られないように
抱っこしたまま、階段をかけ下りる〇〇。
このとき
彼からもらったイヤーカフが落ちてしまったことにも
気が付かずに…
**
レンside
いいデュエット曲になりそうな予感で
胸がいっぱいになりながら
屋上から階段で降りていくと
途中にキラリと光るものをみつけるレン。
「…これは…」
すぐに駆け足になる。
タタッ
「お姉ちゃん、本当に大丈夫?
僕、一緒にお布団で寝てあげようか?」
と可愛いことを言う修斗に、
『修斗くんありがとう^^
お姉ちゃんは強いから1人で大丈夫だよ!
ほら、ママが待ってるから行きな!』
と返す。
「うん。また…会えるかな……」
『きっと…会えるよ^^』
そういうと
パッと腕を離して、
自分の母親の所に帰っていく。
(いいなぁ…家族……)
そんなことを考えて
ボーッと修斗を見送っていると