第17章 代替品の恋慕
「フッ…そうだよね。
確かに、俺らしくない……
今回のデュエットプロジェクト…
何もかも俺らしくないんだ…」
レンが本気で悩んでいることを悟る〇〇。
『彼と何かあったの?』
ただ何となく…
でレンが人をここまで嫌悪することは
無いだろうと考えた〇〇はこう尋ねる。
「………色々…かな。
本読みでは棒読み同然だし、
デュエット曲の打ち合わせだって
俺たちの子羊ちゃんを口説いたりして…」
と、そこまで言って
ハッと口を噤むレン。
”俺たちの”という言葉が
恋人以外の女性に使うべきでないことなど、
分かりきっている。
それに言い方的に
他の女性のことで嫉妬して不貞腐れていると
恋人に伝えているようなものだ。
その様子を見て、〇〇は
『本読みで本気じゃない人はたまに居るから…
本番で本気出してくるタイプかも?
レンくんは呑まれないように
自分の演技を固めてたら大丈夫だよっ!』
と気にしないフリ。
『あとは…口説く…うーん…』
一緒になって考える様子を見て
彼女を好きになった時のことを思い出す。
(……あの時も、
どうやったら子羊ちゃんに振り向いてもらえるのか…
一緒に考えたっけ…)
〇〇がサイドの髪を耳にかけると
キラリとイヤーカフが光る。
舞台稽古のとき〇〇が拾い、
レンがプレゼントしたものだ。
実はこれも春歌にあげようとしていた物。
でも、春歌は自分に振り向いてくれないし、
想いを伝える気もなかった。
それに、自分のことを気にかけてくれる
このお姉さんに甘えたい…
その気持ちにが膨らんで行ったのも事実。
その気持ちを今、
桐生院ヴァンに揺らがされている。
そのことに更に苛立ってくる。
レンが勝手に悶々としている中
彼女の中で話が進んでいく…
『確かに、桐生院さんのせいで
七海さんが作曲に
集中出来なくなったらマズイもんね…
あの口説き癖をどうするか……』
と顎に手を当てて考える彼女の
この言葉に少し引っかかる。
「あの口説き癖?…
…あのってどういうこと?
もしかしてレディも何か言われたの?」
少しムッとした表情のレン。
そんな彼を見て
『私のは冗談だよ!
誰にでも言ってるんだよ多分^^』
と安心させようとする〇〇。