第13章 Mighty Aura
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数日後
デュエットプロジェクトについての
憶測記事が世間に公表された。
通勤中のクリーニング車の助手席で
記事を読む〇〇。
『い、一ノ瀬トキヤ…脱退!?!?』
この前レイジング事務所で見かけたこともあって、
驚いて声を上げてしまう。
「…まぁどれも憶測の内容ですが、
見出しのインパクトが強いので、
勘違いする人も出てくるでしょうね…」
と、記事の内容に先に目を通している様子の
菱が運転しながら〇〇にこう言う。
『あぁ…憶測か…
見出しにビビっちゃったよ〜…
ちょっと”彼”に事情聞いてみようかな…』
「そうですね。
例の件の話は通してありますから…」
『うん、ありがと〜…』
〇〇はスマホの連絡先の中で
「岸谷(きしや)」という名前を探し、
電話をかける
~♪
「…もしもし?こちら岸谷」
画面の名前を見ずに電話をとるタイプなのか、
登録を一切しないタイプなのか
少し様子を伺うような声色で
50代前半くらいのいわゆるオジサンの声が
電話の向こうから聞こえる
『あっ、岸谷さん?
お久しぶりです~□□です。』
と、相手の態度とは打って変わって
にこやかに応える〇〇。
「お、嬢ちゃん久しぶりだな~、
菱ちゃんから
例の件の話は聞いてるよ~
フリーの記者からすると
ありがたいお話だねぇ〜」
相手がわかってからは
親戚のおじさんのように優しい口調になる岸谷。
『岸谷さんには返しきれないほどの恩が
ありますから。当然ですよぉ^^』
お互い世間話も程々に、
「ハハッ…で、
こんな、オッサンに何の用だい?」
と、本題を聞き出す岸谷。
『今出てる記事…
一ノ瀬トキヤの話って…
デタラメで合ってるんだよね?
誰がこんな記事書かせたか分かる…?』
さっきまでの敬語が嘘かのように
身内に話す口調で
本題を話し始める〇〇。
「おっ、嬢ちゃん、
遂にアイドルに手出しちゃった?
ちょっと待って…今調べる…」
電話の向こうで
カタカタカタ…
とタイピングしているのか
物音が聞こえる。
「うーん…
あー、これは
デタラメっぽいなぁ…
記事書いてるやつ知ってるけど
レイジング事務所の金魚の糞みたいに言われてる。
社長が書かせたんじゃない?」
と、興味なさげ。