第12章 向き合う
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2人でおなかいっぱい食べて
ソファで
ワインを片手に語り合う。
「そういえば…デザイン…またやるの?」
と、菱がダイニングの
紙の束に視線を向ける。
『あー…
ちょっと特番みてたら
いろいろ思いついちゃっただけ。
そんなだいそれたこと考えてないよ。』
と笑いながら言うと…
「やればいいじゃない。
せっかく企画部作ったんだし。」
と紙の束を持ってきて、
ペラペラと捲っていく。
そう、企画部は
私が衣装デザインをやりたいが為に作った部署。
『そんな簡単じゃないんですぅ…』
私は菱が見終わって
積み上げていく
紙の1枚を見ながら
小さく呟いた…
「あの特番…見たんでしょ?」
『うん…』
「作曲者…みた?」
『……うん。』
「…あんた…このままだと
あの子に全部もって行かれるんじゃない?」
菱に現実を叩きつけられて
雨に打たれているような感覚になる。
『………かもね…』
「かもねって、………
私が最初に出会ったあんたは
死ぬほどカッコよかった。
あのステージで、
私の衣装をアレンジしたあんたなら
最高のデザインを作れる。
だから、もう一度チャレンジしなよ。」
『…………
何言ってるの…
私の夢はこの会社だよ
デザインはそのためにやってたことで…』
いまいち
踏ん切りがつかない私は
あれこれ理由をつけて
過去の夢を遠ざける。
「………はぁ……
まぁ、無理にとは言わない。
でも、会社の皆も
少しくらい我儘言ってくれって
思ってるよ。」
呆れた様子の菱。
『……うん。
ありがとう……』
それからも菱は
デザイン案を見漁って
あれこれと私を励ましてくれた。
私だって、衣装をデザインして
皆に恋人としてだけじゃなく、
仲間としても認めて貰えたら
どんなに幸せだろう…って思う。
でも、私は夢を追うことに恐怖を感じる。
夢を追いかけると、
音を立てて色んなものが崩れ落ちていく
あの絶望を何度も味わっているから。
『って、もう、
せっかくなんだから、飲も飲も!』