第1章 処女(おとめ)の祈り
――――今から数時間前。
同じ月を美兎は彼氏の颯真と公園で眺めていた。
「綺麗な月たね。」
「うん………今日は満月だね。」
美兎のバイトの日は必ず迎えに来てくれる颯真。いつも通り抜ける公園、今日はジョギングをする人やスケボーに興じる少年らもいなくて静まりかえっていた。
「美兎ちゃん!」
つないでいた手に不意に力がこもって…………
颯真は驚く美兎を引き寄せて優しく口付けをした。
「………い、いやぁ………」
すぐに身体を離す美兎。大きな瞳に涙を溜めて。
「ご、ごめんっ、美兎ちゃんが可愛すぎて。嫌だったよね………」
「い、嫌じゃないの、嫌じゃないけど………私こそゴメンなさいっ!………じゃっ、明日また学校でっ!」
美兎は公園に颯真を置いたまま一人走って帰宅した。
(………キ、キスしちゃった!私どうしよう!
ママとパパみたいに初めてのキスは結婚式でしたかったのに!)