第1章 処女(おとめ)の祈り
美兎(みと)は今宵もまた自室の窓から綺麗に見える「月」に向かって一心に祈っていた。
物心ついてからというもの、ずっと毎晩続けている「お祈り」。彼女の両親のロマンチックな恋愛話を聞かされてからずっとずっと。
ふたりの間に生まれた2人の女の子、美兎と美紅が成長してもなお、お互いを名前で呼び合うほどのラブラブな両親。
そんなママとパパに憧れて、処女(おとめ)は今宵も月に祈りを捧げる。
今宵は特に力がこもっている。白い額には汗がにじみ、薄茶色の前髪が乱れて数本貼り付いている。
「女神様、どうか、どうか――――」