第10章 生徒会長[〇宇髄天元]
美術準備室まで連れて行き、椅子に縛り付ける。
向かい合うように椅子を並べ、背もたれを前にして俺も座る。
俺の目の前にいる奴は、これでもかってくらい嫌そうな顔をしていた。
「俺は人一倍耳がいい」
「だからなんです」
「お前、昨日は何で休んだ?
本当に体調不良か?」
そう聞くと、は目を逸らした。
「そーですよ」
耳が良くなくても嘘ついてることぐらい分かる。
嘘つくの下手だなこいつ。
昨日電話したのもこいつだった。
普通は保護者が電話をかけて来るものだ。
「縄解いてください。
体罰で訴えますよ」
「そしたら俺はお前のタバコのこと言うからいいぜ?」
「このクソ教師……!!」
「口悪ィなおい。
よく生徒会長やってられるぜ」
「内心のためなら何でもする」
「内心気にしてる奴がタバコ吸わねぇよ」
「……」
生徒会長やってる時は、クールで大人しくて高嶺の花みたいな感じで、生徒らの憧れの的なのに、それが実はタバコ吸ってるなんて誰が想像できるんだろうな。
たまにタバコの匂いはしていたが、親が吸っててその匂いが着いたんだろうと思っていた。
まさか本人が吸ってるなんて思ってもいなかった。
親のを貰ってるのか、それとも自分で買いに行ってるのか。
ナチュナルメイクに大人っぽい格好しとけば店員は騙せる。
あの時の服装はジャージだったから、タバコだけ吸いに外に出たんだろ。
「もう一度だけ聞くぞ。
お前昨日なんで休んだ」
「答えたら何かなります?」
「縄解いてやるよ」
「…………親関係ですよ」
「親?」
「答えたんで解いてくれます?」
聞きたいことは山ほどあるが、縄は解いてやった。
俺様は優しいから。
準備室を出ていく時、は言った。
「先生」
「あん?」
「詮索する男はモテないですよ」
そう言って悪餓鬼みたいにはにかむ。
そんな顔しといて、なんでそんな音させてんだ?