第10章 生徒会長[〇宇髄天元]
「俺の事無視できる立場?」
「…………」
「優秀で華奢な生徒会長が、実はタバコ吸ってましたなんて誰が想像できるんだろうな」
「性格悪いって言われません?」
「言われなーい」
言い方が更にイラつき、データを保存してパソコンを閉じ、資料をホチキスで止め始めた。
「まぁ俺も高校生の時はタバコ吸ってたし人の事言えねぇけど、一応お前の担任だしな」
「だったらわざわざ脅さなくても良かったのでは?」
「そう?」
ニコニコと笑う宇髄には溜息をつき、あの日のことを思い出していた。
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あの日、夜遅くの公園のブランコでタバコを吸っていた。
この時間帯なら誰も来ないから安心だと思っていた。
だけどその考えが良くなかった。
ヒヤッとしたものが頬に触り、軽く悲鳴をあげる。
それと同時に咥えていたタバコを取られた。
「お前こんな時間に何してんの?」
「う、宇髄……先生……」
缶ジュースを持った担任の宇髄がを覗くように立っていた。
「意外だなぁ。
お前みたいな生徒がタバコ吸ってるなんて」
「……すみません」
「だからお前からたまにタバコの匂いがしてたのか。
親が吸ってんのかなって思って何も言わなかったけど」
「親も吸ってます……」
「担任としちゃこのまま見過ごす訳にはいかねぇなぁ」
缶ジュースを開け、飲み干す。
「内申には響かせとかないでやる。
その変わり俺の言うことなんでも聞け」
「なんでも?」
「まぁ頼み事だな。
俺が頼んだこと全部やれ」
「パシリじゃないですか」
「内申に響かないだけいいだろうが。
これが冨岡とか不死川だったら容赦無かったぞ」
「……分かりました」
「うし、じゃあさっそく。
もうタバコは吸うな」
「え?」
予想の斜め上を言った宇髄には驚いた。
「若い奴がそんな吸っていいもんじゃねぇよ。
吸いてぇんだったらちゃんと20超えてから吸え」
「……はい」
「お、素直。
送ってくから帰れ。
JKが出歩いていい時間じゃねぇよ」
公園の時計を見ると12時を過ぎていた。
「あ、少しでも破ったら内申点に書くからな」
「鬼……」
こうして彼女は、宇髄の言いなりになるのだった。