第9章 あの花畑で[△不死川実弥]
儀式の日はやってきた。
白装束を身に纏ったを、鬼の住処まで送る。
その際一言も話してはいけない。
そういう決まりだ。
それを分かっていたはずなのに、は俺に話し掛けた。
「今までありがとう実弥。
ごっこでも、貴方と夫婦でいられて楽しかったわ」
「…………」
「…最後まで規則通りなのね」
「……」
「連れてきました」
門の扉を開き、鎖で繋がれている鬼にそう言う。
鬼はを見ると、涎を垂らし始めた。
2年ぶりの人間だ。
その際この鬼は人間を喰っていない。
喰ってはいると思うが、力は付かないだろう。
「実弥」
「……」
「ありがとう、実弥」
「………………」
「じゃあね」
嫌だった。
こいつが鬼に喰われるのは。
そう思うと身体が勝手に動いた。
締め掛る門の隙間を潜り、静止する声を聞かないで走った。
「っ」
殺されそうになるに飛び掛り、鬼の爪を避けた。
「……なんで…………」
「馬鹿な女だよテメェはァ。
死にたくないって……逃げたいって言え!
そうしたら俺がどこにでも連れてってやる!」
「実弥……」
隠していた刀に札を張り、を守るように立つ。
「馬鹿はお前だよ少年。
その贄を差し出せば、お前たちは生きられる」
「そうはいかねぇんだよォ……
今度は"ごっこ"じゃねぇ。
俺はこいつと夫婦になる」
「愚かだな……ただの人が、太陽の光がないこの場所で俺に勝てるとでも?
お前を殺して贄も殺す」
攻撃を交わし、腕を斬る。
腕を斬られた鬼は断末魔をあげた。
「どうだァクソ鬼ィ、太陽の光がなくても死なねぇってかァ?!」
「この餓鬼……!!」
頸さえ狙えばこっちのものだ。
鬼の倒し方は分かる。